性格には、狐ではなく妖狐だ。

パット見ただの浴衣を着たイケメンのお兄さんに見えるが、違う。

頭からは日本の琥珀色の耳。
そして、九つの大きな尻尾。

私に気がついてもらったからか、そいつは嬉しそうに顔を輝かせた。

話しかけてくるかな、と思い私は近くの路地裏へ入った。

ああもう。早く帰りたい。


妖狐が来る寸前、小さく深呼吸した。
これだけで気持ちが落ち着いて、冷静になれた。

内心かなり動揺してるが、態度に表さないように冷静を保つ。

妖狐と正面に並び、私は誰かの家の塀にもたれかかる。

「いや〜、俺、気づいてくれるとは思わなかったよぉ」

随分と明るく軽い感じで妖狐が言う。

「で、確認なんだけど名前は?」

え、なんで確認?
私の名前元々知ってるの?

「…朝霧華子」

嘘を吐く理由もなく、本名を名乗る。

普通なら自分から名乗って欲しいが妖怪に礼儀も何もないだろう。

「華子、ね。よし、あってる」