「アイツは北宮の息子だぞ!!あんなやつの息子に誰が娘をやるか!!」

「お父様と北宮様の仲が悪いのは私も知っています。だからといって、知也さんまで否定するのはおかしいわ!
彼みたいな…あんな素敵な人はいないわ!!」

「所詮北宮の息子だ。裏で何を企んでいるかわからん」

「そんな…」

香恵の目に涙が浮かぶ。
今にも流れ落ちてしまいそうだ。

「とにかく、アイツのことは認めん。わかったな!!」
政人の強い口調に香恵は何も言えなかった。
ただ無言で涙を堪えていた。

「今日はもう遅い。早く寝なさい」

まるで小さな子供をあやすような優しい声で政人は言った。

香恵は小さくおやすみなさい、とつぶやくと、走り去った。



「全く…」

大きなため息をつき、ソファーに座る。

しばらくして、先ほど青年が持ってきた白ワインを飲み始めた。
それは、程よい甘さと柔らかい口当たりで、腹が立つほど、政人の好みだった。