1人で泣くつもりだったのに、
『かっこいいよな〜由良先輩』
手すり壁にもたれかかってそう呟いた女の子の後ろ姿が目の前に見えたんだ。
もうどうにでもなれ、そんなつもりで。
振られた俺を慰めるみたいなその声に
少し笑えて。
俺は、綺麗な目をした子犬のような君に声をかけたんだ。
彼女が振り返って、俺に告白してきた瞬間、
我慢していたいろんなものが溢れて。
彼女をギュッと抱きしめた。
もちろん、彼女を抱きしめるつもりなんかこれっぽっちもなかった。
愛菜にできなかったことを
愛菜に置き換えて、
愛菜にしているつもりで、
俺は美子を抱きしめて、美子の頬にキスをした。
愛菜、俺はずっと君が好きだったけど。
君はこれっぽっちも俺を男として好きにはなってくれなかったか?



