「…えっと」


「嫌?」


一歩、また一歩と距離を縮めていく先輩。


とうとう、私の体はコンクリートの壁にぴったりとくっついて後ろの逃げ場は無くなってしまった。



「…嫌とかじゃなくて」


先輩は、好きでもない私とキスができるのですか?


「じゃあ、いいよね」


先輩はそう言うと、またチラッと離れた保健室の窓に目を向けた。


なんだろう…先輩のこの感じ…。



まるで…。



だんだん先輩の顔が近づいてきて、思わず顔を下に向ける。


こんなかっこいい顔、そんな近くでまともに見られないよ…。


今から私、由良先輩とキスしちゃうの?


そう思うだけで心臓の音は速くてうるさい。



先輩はどうして私と…。



「…美子ちゃん」



大好きな彼に名前を呼ばれたかと思うと、私の下に向いていた顔が彼の指によってあげられて、


バチッと先輩と目が合ってしまった。



もう、蒸発して体が無くなってしまいそう。



こんなにドキドキしたことなんて初めてだ。