「名前、聞いてなかったね」
正直、目の前にいるこの子の名前なんてこの際どうでもよかったし、ただその体を貸して欲しいなんて感情しかなかった。
「…あっ、えっと…1年C組の小柴 美子です」
「美子ちゃんって言うんだ。可愛いね」
「っ!!ぜ、全然!可愛くないです!あ、ありがとうございますっ!」
顔を真っ赤にしてそういう彼女は、初々しいという言葉がよく似合っていて、この世の汚いものを何も知らないって綺麗な瞳をしている。
あー、この子といると、自分の汚さが余計浮き出て見えちゃうな。
おバカな子だよ。
こんな俺のことが好きだなんて。
まぁ、今までの子とおんなじように俺の容姿にしか興味がないと思うんだけど。
「あの、ほ、本当にお、お付き合いしてくれるんですか?」
今日初めてこの子を見た時から、すぐに気付いたけど。
男性経験ゼロなんだろうな。
「うん、お付き合いするよ。美子ちゃんが俺でいいなら。美子ちゃんこそいいの?自分のこと好きにならない人と付き合って」
初めてなんでしょ?
だったら尚更、こんな男はやめた方がいいよ、なんて。
抱きついた俺が何を言ってんだか。