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コンコンッ
「美子いる?」
数分経って、トイレのドアがノックされると栞のそんな声がした。
「えっ、栞?なんで……」
「早退するんでしょ?カバン持ってきた。先生にもちゃんと言っといたから。それで、大丈夫?」
栞の優しい声に、少しだけ気持ちが落ち着く。
「うん。ありがとう栞。ごめん……」
「なんで謝るかな。出てこられそう?」
まだ私が腹痛で苦しんでいると思っている栞に申し訳ない。
振られただけだなんて。
「ごめん、栞」
もう一度謝って個室のトイレから出る。
「美子?」
突っ立って俯いている私を見て、栞が心配そうに声をかけてくれる。
栞には本当のことを伝えたい。
「あのね、栞……お腹痛いの嘘なんだ……実はね、私ね、」
言いながらまた涙がこみ上げてきて、
「由良先輩に、……振られちゃった」
泣きながら栞にことのいきさつについて説明した。



