「帰ってきてたんだ」

「……うん。夏期休暇で」

「いつまでいるの?」

「今日が水曜日だから……日曜日、まで」

「なんだ。意外と短いんだな」


行く手を阻むように私の進路に立ったまま話し出す樹に、私は内心焦っていた。

私たちはもう、のんびり世間話をするような関係でもないのに。


「あ、あの、樹。私もう帰らないと。醤油も重いし」


それじゃ、と樹の脇をすり抜けようと踏み出した私の左腕に提げていた買い物袋が、強い力で引っ張られた。


「え?! ちょっと」

「送ってくよ。丁度これから佳奈の家に行くところだったから」

「うち? 何で?」


樹の言葉に驚いて顔を上げると、至近距離で目が合った。さすがに7年も経てば、柔らかい少年の面影はなく精悍な顔付きへと変わっていて、心臓がどきりと音を立てて跳ねた。


「何でって、配達。お得意様だからな、佳奈ん家」


ーー俺ん家が何屋か忘れてないよな?
腰に巻いてある薄汚れた紺色の前掛けを指差して、樹はどこか楽しそうに言った。