『じゃあ…私塾。』 「うん。家まで、送る?」 『大丈夫だよ、あたし強いから。』 「はは、そうだよね」 その場で手を振り離れようとするのだが、急に右手を引き寄せられた。 そのまま、どちらとともなく抱き合い、キスをした。 『あ…』 二人同時に発した言葉が、より一層虚しさを煽る。 ――ポタッ… あたしの瞳から、一粒の光が落ちる。 何泣いてんのよ、あたし。 ああそっか。 茶髪の彼、居るもんね。 今私は、紛れもなくあの茶髪の彼が気になる。 亮じゃなく、智じゃなく、あの人ー。 _