既に樹さんの呼んだタクシーは薬局に着いているようで、駐車場からハザードの光が漏れていた。
それを確認し、樹さんはあたしに向き直る。
そして、無邪気な笑顔のまま告げる。
「川口さん、ご親切にありがとうございます」
「とっ……当然です!
こちらこそ、ご迷惑をおかけしました!」
九十度の角度で深々と頭を下げるあたしを見て、樹さんはまたふふっと笑った。
そして駐車場で待つタクシーの方へと消えて行った。
あたしは、そんな樹さんの後ろ姿を見ながら、訳の分からない音を立てる胸を押さえていた。
胸が熱い。
搔きむしりたくなるようなむず痒ささえ感じる。
あたし……どうしてしまったのだろう。



