真っ赤になって口を手で塞ぐあたしを、樹君は目をまん丸にして見ていた。

そして開口一番、



「菜緒ちゃん……

菜緒ちゃんが解説者みたいだよ」



なんて言う。

だってあたしは、必死に勉強したから。

樹君とサッカーの話が出来るように、矢沢さんに怒られながらも勉強した。

そんなあたしの努力を樹君は分かってしまったようで、



「菜緒ちゃん、頑張ってくれたんだね」



嬉しそうに言う。

その言葉がまた心を揺さぶる。

まるで、褒められた犬のように幸せになり、樹君に身を寄せたいなんて思ってしまう。