「ねぇ、菜緒ちゃん」 樹君の声で、はっと我に返った。 だけど、樹君を見ることなんて出来ず俯くあたしに、樹君は言う。 「サッカー知らないのに、菜緒ちゃん連れてきてごめんね。 ルール分かった?」 樹君はどうしてこうもあたしのことを気にしてくれるのだろう。 きっと、出場出来ずサポーターから責められる自分と、必死に戦っているだろうに。 あたしを構っている心の余裕なんてないはずなのに。