飛べない鳥に、口づけを。








樹君に狂い、樹君に胸を焦がしている間にも時間は進み、あっという間に試合開始の時間となる。

青いユニフォームを着た選手がピッチを駆け巡り、青い客席が湧いた。





DVDで観た試合と同じだった。

戸崎柊の無回転シュートに心を奪われ、黒木剛のトラップに目を見張った。

だけど……物足りなかった。

DVDでは存在を見せつけていた樹君が、ピッチにはいない。




ちらりと樹君を見る。

樹君は楽しそうにピッチを見て応援しているが……

本当に楽しいのだろうか。

仲間が輝く姿ばかり見て、何を思うのだろうか。