飛べない鳥に、口づけを。






ふと、樹君のユニフォームを見る。

本物なのかなと思ったが、なんと背中に書いてある文字は、「OZAWA 」ではなく「TOZAKI 」だ。

戸崎柊。何度もDVDを観たあたしは、彼のことをもちろん知っている。

強力な左足を持つフォワードの選手だ。

矢沢さんのDVDでも、何度もシュートを放って目立っていた。

戸崎の派手なプレーに対して、樹君は冷静で着実なプレーをすると思ったほどだ。






「樹君は、戸崎選手を応援しているの?」



そう聞くと、樹君は楽しそうに目を細める。



「うん。俺が何も出来ない分、柊に頑張ってもらわないと」




彼はそう明るく言ったが……

やっぱりどこか切なげであたしの胸が痛む。

樹君だって、本当は試合に出たいのだろう。

仲間の輝く姿を見て、心を痛めるのだろう。

それは怪我をした選手の宿命なのかもしれない。

あまりに辛くて切ない宿命だ。