天使の傷跡


はっきりとノーの意思表示をした私に課長は瞠目し、そして言葉を失った。
そうしてしばらく二人の間に重い沈黙が流れた後…


『 それでも俺は諦めたりしない。お前がノーと言うならイエスと言わせるまでだ 』


再び瞳に強い力を滲ませた課長ははっきりそう宣言したのだった。

次に言葉を失ったのは私。

…それでも駄目なものは駄目なのだ。
どうやっても納得してもらうしかない。

そう考えて口を開きかけたところで別の社員が出社してきた。
慌てて口を噤んで自分のデスクに戻ると、お互いに何もなかったかのように平静を装って仕事に取り組んだ。


それから一週間。課長はあの日のことには一度も触れることなく、それどころか何事もなかったかのように全てがいつも通りだった。
諦めないと言っていたのは、きっとただの虚勢だったのだろう。
そう結論づけて、あの日起こったことそのものを忘れようと努力していたのに。