太一side




自主練が始まり、

隼人と2人で何をするか話していると、

体育館に環奈が顔を出した。




「環奈だ」


隼人「本当だ。ボール出し手伝ってもらう?

あ、でも体調悪いんだっけ?」




そう聞く隼人に小さな声で、




「あのミサンガみたいなの、

昔、百合ヶ丘の…ほら、あいつに貰ったんだって」




そう、一ノ瀬という奴を視線で教えると、




隼人「あー、あのワケありのね…

そりゃあ気まずいわけだ。

環奈ー!ボール出して!」




そう、気の毒そうに言うと、

環奈の方へ歩いていく。


隼人も隼人なりに環奈を気遣って、

何事もないかのように振る舞い、

環奈も、きっとそうされることで

心の安定を保っているんだろう。


でも、本当にそれでいいのか?


このままでは環奈の中の過去のモヤモヤが、

この先もずっとつきまとうことになる。

早いうちに解決しておくのがベストだろう。


今、俺が優しくする事で、

環奈の逃げ場になったとして、


環奈は本当に俺のことを

見てくれるようになるだろうか?