きゅっと目を瞑り、ティアラの温もりを感じていると、頭にふわりとしたものが当たった。


それは、今自分が抱きしめている、少女の手のひらで。



「サラ、だいじょうぶ? ティアラが、いい子いい子してあげる」


ゆっくりと私を撫でる健気な少女の優しさに、ジワリと涙腺が緩む。


「ありがとう、ティアラ……」


すぐ近くにある玄関からは、限界に近い軋みが聞こえてくる。


(まずい、もう扉が壊される……)


突如、バツンッという鈍い音とともに、家の電気が一斉に消えた。


「キャッ!」
「真っ暗だぁ! サラ、怖いよぉ」


少女の泣き声で私はハッと我に返り、彼女に此処にいるように伝える。


「ちょっと、ライアンさんの様子を見て来るから、ここに隠れててね? 絶対だよ?」


……そう、電気が消えたということは、警察に通報している電話も、繋がらなくなってしまったということ。


もし、家のブレーカーが落ちただけなら、急いで復旧させなければならない。


余所者の自分にはブレーカーのある場所が分からないため、家の主であるライアンさんに、聞きに行かなければいけないと思った。


……というよりも、何かしていなければ、この恐怖に飲み込まれてしまいそうだった。