この世のものとは思えない顔つきが、唸り声が、先ほど彼女を襲った男と全く同じで、自身の中にある本能が警鐘を鳴らす。


アレは”人間”じゃない、と。

「ライアンさん、逃げてーっ!!」


窓枠から身を乗り出してそう叫ぶも、何かに犯されて狂ったミッシェルさんが夫の右肩を食い千切った。


「うわぁぁぁぁ!」


妻の身体を突き飛ばし、命からがら再び家に戻った彼が、鍵を閉める音が聞こえてくる。



私は急いで階段を駆け下り、まだ安らかに寝息を立てるティアラの元へ向かった。



「ティアラ、起きて! 外が大変なことになってるの!」


勢いよく両肩を揺さぶれば、少女はまだ眠気まなこで起き上がる。


「なぁに? サラ。わたし、まだねむいよ……。あれ、パパとママは?」


普段、同じ寝室で川の字になって寝ているはずの両親がどちらもいないことに気付き、ようやく眼が覚めた様だ。


「とにかく、どこかに隠れる準備を……」


突然、バンッ! とけたたましく寝室の扉が開けられる。


恐怖と緊張で体を固まらせてジッと扉付近を見つめていると、中に入ってきたのは肩を負傷したライアンさんだった。


その手には、護身用の銃が握られている。