帰り、私はいつものように、友達と帰る。
でも、健斗のことが頭から離れなかった。

「…ごめん。先帰ってて!」
「え、唯ちゃん!?」

(確か、健斗はまだ帰りの準備をしてたはず)
私は学校に向かって走った。

「はぁ…はぁっ……!!!」
学校をくぐる前、校門をチラッと見ると、そこにはランドセルを背負った健斗が座っていた。
「健…斗?」
私は恐る恐る、健斗に近づく。
すると、健斗はニカッと笑った。
「ヘヘッ!待っててよかった!」
「!!」
(待ってて…くれたの?)
少し鼻水をすすっている健斗は、真っ直ぐに私を見つめた。
私はまた、恐る恐る健斗に話しかける。
「もしかして、いつも、待ってた…?」
「ん?」
目を細くさせ、またニカッと笑う。
「うんっ!」
その瞬間、胸がズキッと痛んだ。

いつも、置いていった私を、
いつも、無視していた私を、
いつも、冷たくしていた私を、
この、最低な私を、
彼は、ずっと待っていてくれた。

それが嬉しくて。
余計に、好きが溢れてしまう。

「…ごめん。」
「いいんだよ。戻ってきてくれて、ありがとう!…さ、帰ろ。」
なんて、いい人なんだろう。
そう思った。
(あーあ、最近私、涙もろいなぁ…)

「ありがとう。行かないでって言われたの、すごく嬉しかった。」
「そんな!私も勝手に…声に出しちゃってて…。聞こえて、たんだ。」
「うん。吉見さんの言ったこと、全部聞き取ってみせるら。」
健斗は顔を上げて、自慢げにそう言う。
私はびっくりして、顔を赤くした。
嬉しかった。そんなこと言う人、他に絶対いない。
心が通じ合えたと思った。

健斗と2人で歩くいつもの帰り道。
だけど、今日は違う。
互いに特別な帰り道となる。
夕日が照らした2つの影は、一つに重なった。