私は、健斗と帰りの坂道を下る。
「ねぇ、どーしたの?いつになく静かなんすけど…。」
「え、そ、そう?そんなこと…ないよ!」
健斗は急に声をかけてきた。
「絶対何かあったよね?話して?」
健斗は、私に顔を覗き込んでくる。
顔の距離が近くなって、私は頬を赤くした。
(言えるわけない。アンタの事だよっ!)

「…そっか。」
健斗は、しばらく私を見つめた後、顔を下げた。
「しつこくは聞かないよ。嫌がられるとこっちが傷つくし。俺の事信用してないなら、言わなくて大丈夫だから。」
あまりにもしょんぼりした声に私は驚いた。
「なんでそうなるの!?信用してない訳ないじゃん!信用してる!すっごいしてる!勘違いしないで!」
私はその場から逃げるように走り去った。


次の日。
私は誰よりも早く学校に行き、1人で考えていた。
(どうしよう、私、あんなに怒っちゃった。
絶対、嫌われたよね…。)


その頃、健斗は教室の廊下にいた。
「ま、まじかよ…。なんで吉見さんも早いわけ?1人で考えようと思ったのに…。…前島、どう思う?」
健斗は、隣のクラスの男子に聞いた。
「え、俺に振るかよ…。あの人も早く来たって事は、あの人も考える為に、早く来たんじゃねーの?俺ならそう考える。…ほら、あの人見てみろよ。腕をまくらにしてうつ伏せになってるじゃねーか。」
「吉見さんも…なにか…?」
「俺もう行くからな。」

健斗は、教室に入っていった。



「あぁー、涙出てきた…。」
私は黄色の帽子で顔を隠した。
すると、急に帽子に重みがかかり、顔を上げると、健斗が私の頭に手を置いていた。
「健斗っ…!!」
「…その…信用してくれて、ありが、と。」
すごく照れながら、健斗はそう言った。
「う、ううん、いいの…!」
私はもう一度帽子で顔を隠し、クスッと笑った。
(嬉しい…。嫌われてなかった。)
それから2人は、前より仲良くなり、毎日笑い合える関係へと進んだ。