あの日から、1年が経った。

「吉見。」
話しかけてきたのは、隣のクラスの前島くんだった。
「三間、覚えてる?」
「!!」
三間健斗。覚えてるに決まってる。
まだ、好きなんだから。
私はコクリと頷く。
「吉見と三間が喧嘩した日?あったじゃん?その時、あいつめっちゃ俺に相談してきたんだ。朝早く来たら吉見がいて、だから廊下で色々話したんだ。」
(え…?)
前島くんは、とにかく健斗のことを話す。
「本当は、外国なんて行きたくないって言ってたよ、あいつ。でも、吉見が行った方がいいって言ったから、あいつは覚悟を決めたんだ。死ぬかもしれない覚悟で。」
頭が真っ白になる。
(そんな、それって、私の、せい…?)

「あと、お前、好きって言ったんだろ?」
「えぇ!?な、なんで、それを…」
前島くんはクスッと笑った。
「全部三間から聞いてんだよ。ちっちゃい声だったけど、ハッキリ聞こえたって言ってたよ。あいつ、俺に電話してきたんだ。相当、嬉しかったんだろーな。」

彼の言ってることが本当なら、それは…。

「そ、そんな、嬉しかったなんて…。」
「でもひとつ、後悔したことがあった、らしい。」
私は''え?''と聞き返す。
「メモ、袋から取り出した時。覚えてる?そこに書かれてた文字、見えた?」
私は不思議と思い、首を横に振る。
「ほら、これ。」
前島くんは、私にくしゃくしゃになったメモ用紙を渡してきた。
ゆっくり、紙を開く。
「!!」
そこには、''スキ''の文字が書いてあった。

ぶっきらぼうな文字。
これは完全に、彼の書く字だった。

「なんで…こんなの前島くんが持って…」
「あー、貰った。いつかは伝えてって言われた。紙、どうする?」
私は紙を見つめて、しばらく考えた。
「いいよ、前島くんが決めて?気持ちはすごく嬉しい。やっと、わかった。でも持ってるだけで苦しいから。」
「おぅ。」

健斗、いい友達を持ったね。
前島くん、すごくいい人だよ。
この事、誰にも言わないで、私だけにこっそり言うなんて…。

お互い、後悔したんだ。
私、健斗を好きになって、よかった。