「ん」 突然目の前に腕が差し出されて驚く。 冬服の、少し色褪せたブレザーがそっと目元に押し当てられて気づいた。 ああ、私、泣いてたんだ。 「ありがと」 別に何か悲しかった訳じゃないけれど、言い訳するのも違う気がして黙って始の手を受け入れる。 時々、ブレザーから伸びた手が頬にあたるのがくすぐったかった。 きっと、彼女になれたら、こんな感じなのかな。 きっと。もし。 想像の言葉は、始の恋心を知るまでは楽しくて、始の恋心を知ってからは少し苦しい。