「俺の親父だ。」

三上と俺はお互いの目を見つめ合い

俺は息を飲んだ。

一度目を閉じて気を落ち着かせた。

「姉弟、なのか?」

「そうだよ。多良は俺の姉になる。」

俺はそう言う三上を呆然とながめ

次第に怒りが沸々と腹の中から浮上し

拳を握り締めた。

喉から声が出ないほど頭に血が昇り

一瞬自分をコントロールできなかった。

三上に指を突き刺してにらみつけた。

「一輝。怒った?」

「当たり前だ。姉弟とわかっててヤッたのか?」

「はあ?」

三上はキョトンとした顔をして首を傾げた。

「何のことだ?」

「とぼけるな!自分の姉と知っててヤッたのか?」

「一輝。少し冷静になった方がいい。」

「多良もすべて知っているんだろ?」

「ちょっと待てよ。一体何をそんなに息巻いているんだ?」

俺は目頭を指でつかんで大きく息を吐いた。

頭痛がしてきた。

三上は再び茶をすすって

憤慨する俺とは違い

心なしかスッキリとした面持ちだ。

「なぜ今まで黙っていたんだ?なぜ彼女は何も言ってくれなかったんだ?」

「一輝。おまえが多良に夢中になって他が見えなかっただけだろ?」

図星だ。

三上の言う通りだ。

俺は努めて内心を表に出さないよう気をつけていた。

彼女を愛し

常にそばにいて

あの時のような涙に濡れた悲しい顔をさせたくなかった。

ただただ愛して

寄り添ってあげたかった。

現実はまったく違って

自分の思うようにはならないことを

三上の話で余計思い知らされた。