「なんて言ったらいいか、三上は自由奔放な部分がある。」

「同感です。彼は自分の思うまま人生を楽しんでいる人だと思います。」

彼女のその言葉で単刀直入に聞くしかないと考えた。

「わかっててなぜ三上だった?その時は誰でも良かった?身近にいたから?」

立て続けに問う俺に

多良は驚いた顔を向け

俺が言わんとすることにどう答えたらいいのか思案しているようだ。

「失礼な言い方で気を悪くされなければいいんですけど、それってつまり、剛英に妬いているということでしょうか?」

直球で問われたことに今度は俺が驚く番だった。

俺は気まずくて彼女から目を反らした。

茶番でしかないと覚悟を決めた。

「君の言った通りだ。笑っても構わない。」

彼女は俺に抱きついた。

「一輝さん、一輝さん。」

「俺ってみっともないだろ?」

「私、嬉しいです。」

「笑わないの?」

「私は常に理解していたいんです。」

「上手く言えないけど、俺はごく平凡な人間だ。」

「だから?」

「だから、君には相応しくない。」

「それは私が決めることです。」

「そうじゃなくて、たぶん君にとって身近にいない一般人なだけだと思う。」

多良は鼻を鳴らした。

それは彼女らしからぬ仕草だ。

「どう言えばわかってもらえるのか良い言葉が浮かばなくて。たぶん一輝さんは誤解されているんです。私に関しての何もかもを。」

俺は首を横に振った。

「違う。俺が言いたいのは、俺たちは一緒にはなれない。それがどういうことかわかるだろ?」

多良は息を飲んだ。

「どうして?どうしてダメなんですか?」