「多良、今何が欲しい?」

彼女は欲しいものは何もなかった。

ただこうして俺の腕の中にいたいと

その通りの気持ちを伝えた。

「何も。ただこうしていたいだけです。」

「ちょっと話がしたい。」

「話?」

俺は彼女の肩をそっと抱いたまま切り出した。

「三上のことだ。」

「剛英のこと?」

彼女が怪訝な顔で見上げた。

俺は多良と三上の関係にわだかまりを感じていた。

つまり単なるエゴだ。

正直自分の気持ちは悟られたくないが

彼女は何も悪くないと思うから

傷つけないように言葉を選んだ。