「入っていいかな?」

目と目が合った。

玄関先で見つめ合うだけで

私は胸が締め付けられるほど切なかった。

彼の気持ちをもっとしっかりつかみたい。

もっと強く愛し合いたい。

もっとお互いの想いを分け合いたい。

もっともっとと自分がこんなにも欲望の塊でしかなかったのかと

恥ずかしい限りだ。

「どうぞ。」

ドアを持ったまま狭い玄関の中で半歩よけた。

一輝さんの後ろからまた中に戻った。

彼は部屋の真ん中で振り向き

いつもの素っ気ない表情を私に向けた。

「慣れた?」

ロフトとキッチン

トイレ付きのユニットバスしかない7畳のワンルームは

必要最低限の生活空間である。

私が返事をしないでいるこの場の空気を読める彼は

いきなり私を抱きしめた。