クラブの分厚いドアを背にした俺は

これも何かの手違いだと思い

踵を返してドアノブに手を差し出そうとした瞬間

誰かに左肩を捕まれた。

「一輝。」

顔を確認しなくてもその声で誰だかわかった。

三上だ。

「なぜ帰るんだ?」

俺は振り向いて三上の目に訴えた。

「場違いだ。」

「いいから、奥へ来いよ。話があるんだ。」

彼の友人として最も相応しくない俺は

言われるまま彼とフロアを歩いた。