その後も幾度か会って話すたびに

一輝さんは私を無理に理解しようと思わなくなった。

燃え上がるような胸が躍るような恋とは違い

ひたひたとしっとりしたお互いの想いが二人を包んだ。

私は剛英の言葉を思い出した。

「一輝は元々全てを表に出さないが俺は知っている。あいつがどれ程の情熱家か。院生の時チャラい女に散々振り回された苦い経験のせいで余計内面を表さなくなった。あいつが惚れ込んだらどうなると思う。死ぬまでその女を離さないだろう。」

二人にとって求め合うことに急ぐ必要はなく

時間はかかったが肌の温もりを共有しながら語り合う夜が増えた。

お互いに無言でも気まずい感じはなく

初めからそこにいたかのようで

語り合った夜の数だけ親密感があった。

私は自分が彼に愛されていると自然に思えた。

だが彼は意識して言葉にしなかった。

私もそれを強要しないし

家が決めた婚約者のことも一切口にしなかった。

実際しこりではあったけれども。