俺は考えた。

手の平の上で俺を好きなように弄ぶ三上を

どうやって懲らしめようかと。

散々考えても良い案が思い浮かばないでいた。

あの日以来多良とは外で数度会い

彼女の自宅には近寄らないことにしていた。

今日も都内のカフェでランチを共にし

食後は場所を変えて

近くの海沿いにある広い公園に繰り出した。

陽射しは柔らかく

冬になりそうでならない秋の終わりを俺は彼女と過ごした。

いつも一人でいる週末とは違うことに

戸惑いと緊張感がない交ぜになったような気持ちでいた。

公園にはあちこちにベンチがあり

その一つにこうして彼女と座り

ポツポツと話しながら時間を共有することが

当たり前になりつつ

多良が家を出るとタンカを切った矢先に

祖母の死と諸々の相続と

今度は祖母の意思を継いだ母親からの拘束に

彼女はすでに限界を感じていると言った。

「一輝さん、やっぱり家を出るわ。」

「なぜ?」

「おばあさまが母に替わっただけで、私の意志はあの家で完全に無視されたままですもの。」

「それは事実だ。」

「この先何も変わらないと思うと、自分から行動を起こさない限り私の人生はあの家で終わってしまうわ。」

「それも間違ってない。」

「いつも堂々巡りで毎日が無駄に過ぎていくことに我慢ならないの。」

そう言って多良は俺の横顔にうっとりと期待するような眼差しを向け

俺に会話を促すが

そもそも俺ごときに妙案などない。

どうすべきかは彼女自身が決めることであり

こうして相談を持ちかけられても

俺には返すものが何もない。

「私が考えに考えた結果です。」

「で、どこへ行くんだい?」

「勿論一輝さんのところです。」

「困る。」

「二人で引っ越すというのはどうかしら?」

「無理だ。俺に頼らなくても君なら一人で生きていけるはず。俺のことは家を出る口実だろ?」

「違います。」

「三上に相談した方がいいと思う。」