「多良、なぜ俺を選んだ?」

「初めは剛英の親友だと紹介されました。会う前に剛英が知る限りの一輝さんの全てを知っておきたかったのです。私は何度もあなたのことを聞くたびに好きになってしまいました。この人なら私を守ってもらえるのではないか。この人なら私と共に歩んでもらえるのではないかと。」

「三上が親友?」

俺は三上の友人として数に入らないような人種だと思っていた。

それが親友に格上げされていること自体可笑しかった。

「でもやはり全てが無理だとわかりました。一輝さんにはご迷惑をおかけして大変申し訳ございません。」

俺は多良の頬にそっと手を当て

涙を拭ってあげた。

「多良、俺は三上を懲らしめたい。それにはまず君を知っておきたいと思う。」

彼女はさっきとは違う驚いた顔をしながら

また涙で頬を濡らしていた。

それが余りにも可憐で俺の何かが外れた。

気が付いたら彼女にキスをしていた。

唇は柔らかく甘く

彼女の女らしい全てに一瞬で胸の奥に火が付き

優しくはできなかった。

彼女は頬だけでなく

俺との激しいキスのせいで唇もぷっくりと腫れてしまい

お互いに身体中が熱くなってしまった。

どうしてこんな状況になったかは

後で考えても答えが出なかった。

俺にとって溺れてはいけない恋だとわかったのは

その3日後に多良の祖母が急死してからだ。

祖母を引き継いだ多良の母親に呼び出された俺は

彼女との仲を引き裂かれた。