あの日を境に時は徐々に過ぎ去り、春の終わりが近づいていた。

今日こそちゃんと彼に会って、日頃の想いを伝えなくちゃ。
ちゃんと″ありがとう″ってお礼を伝えたい。

私はいつにまして気合いが入り、あっくんの教室に行くことを決意した。

突然行ったら驚くかな?きっと大丈夫だよね。
休み時間になり、私は一歩、また一歩と歩んでいく。

教室に着くと、案の定あっくんは、窓際の席で本を読んでいた。

どうしよう。誰かに呼ぶよう頼まないと…

ちょうど教室に入ろうとしていた女の子がいたので、咄嗟に声を掛ける。


「あの、突然ごめんなさい
林田陽翔さん呼んでくれませんか?」


「あっくんの知り合いか何か?」


「はい!そうです。
後、陽翔さんってどんな人ですか?」


私はつい気になり訊いてしまう。
クラスの人にしか知らないことも沢山あるよね。

LINEではいつも私の話ばかりで、あっくんのことあまり知らない。

人づてから聞くのもおかしいかな…。


「あっくんは頭が良くて、人思いで優しい人です
クラスの場の雰囲気が変わるくらい明るくなるし、楽しい人ですよー」


「そうなんですか?ありがとうございます」


私が思っていたあっくんとは全く違った。
私、何も知らないんだ。あっくんのこと・・・


何でこんなに悲しくなるんだろう。
こんな気持ちになるのは初めて。


「あっくん、あの子呼んでるよ!」


「ちあき、ありがとう」


懐かしい声が聞こえてくる。
今の声ってあっくん?今下の名前で呼んでたよね…?

次第に高鳴る鼓動。

何でこんなに胸が苦しいの…


あの子に嫉妬するなんて、やっぱり私あっくんのこと・・・。