不機嫌であることよりはいいのだが、ご機嫌だとそれはそれで気持ちが悪い。

ご機嫌な雰囲気に気がついたのか、ドアが開く音に反応したのかは分からないけど後ろの席で寝ていた片割れが起きる気配がした。

つんっと軽く突かれる感覚に振り向く。
すると僕と同じ真っ黒な作り物のような瞳がまっすぐ僕を見つめていた。



「なんであんなにご機嫌なの?」



まだ眠そうなその声。
起きた理由はいつもと違う雰囲気によるものだったらしい。



「さぁ?転入生関係じゃないのー?
いつもと違うことってそれくらいでしょ?」

「ふぅん。
楽しめるかな?」

「どうだろうね?」



僕達にとって何よりも重要なのは“楽しいか”“楽しくないか”でしかない。

誰かを信じて深く関わるよりも、誰かで遊んで浅く関わる方がよっぽど有意義だと知っているから。

歪んでる?
おかしい?

たとえそうだとしても、僕達はそれで満足なんだ。
その方が生きてるって感じがするから。