『詳しい話は姫に聞け』

「炉宮……いいの?」


俺は何も答えず笑う。
そして、フードを被った。


「炉宮……さん」

『響葵を嫌わないでやってくれ。
あいつも……乗り越えようと必死なんだ』

「………………はい」


風華に背を向けて、悠葵に言うと小さな声が返ってきた。


「兄貴」


足を踏み出した時に聞こえたのは俺を呼ぶ、しっかりとした声。


『なんだ』

「あの日……俺に言ったあの言葉
どういうつもりだったのか……聞かせてほしい」


それは、1歩踏み込んだ言葉だった。


“お前に何がわかるんだよ!!”
“兄さん……っ?”
“消えろよ”
“……ぇ?”
“俺の前から……俺の視界に入るんじゃねぇ”


あの日……此花が死んだ日の記憶がよぎる。
風華に入っていた弟が憎くてたまらなかった。


『……まだ話せない』

「…………」

『いつか……な』


ポンっと炉亜の頭を撫でた。
もうすぐ知るはずだ。

あの日のことも。

その時に……ちゃんと謝るから。


『姫』

「なに?」

『後は頼む』

「貴方達の尻拭いには慣れているつもりよ」


その言葉を聞いて俺は今度こそ歩を進めた。