「風華の副総長様をどう動かしたいわけ?
今お前がやろうとしていることは─────」


言葉の続きを言った彼を殴る。
……正確には殴ろうとした。

本気で振りかぶったその拳は軽々と片手て受け止められる。

受け止めた彼の顔色は何一つ変わらない。


「人を手の平で転がすのは結構。
俺だってそのやり方は嫌いじゃねぇよ?」

「……だったらっ」

「けど、お前のやり方は“あの日”を繰り返すだけだ」

「……っ」

「俺達と同じ思いをするやつが増えるだけ。
あのBARの存在意味を増やしちゃいけねぇんだよ」


あそこは、全力で馬鹿をやるやつを見るのが好きな馬鹿がやってるBARだ。と無表情のなかに優しさを滲ませる。

いつの間にか鋭い殺気は消え失せていた。


「居場所を失った俺らが集まる場所じゃねぇ」

「分かってる……」

「これ以上集う人間を増やしちゃいけねぇんだよ」


寂しそうに笑う彼は何を想っているんだろう。

そう思うのと同時に、こんなにコロコロと表情が変わる彼を見るのは久しぶりだと思う。


「風華をうまく動かせば、黒炎が出てくると思ったんだ」

「餌にしたってことか……」


納得したように呟く彼は、俺の考えを何となく理解していたんだろう。

驚く様子はなかった。