「まだ引きずってるの?」

「俺より……あいつの方が引きずってるけどな」

「それでも、あなたも引きずっているのでしょう?」

「……否定はしねぇ」



バツが悪そうに逸らされた視線。
そのレキの様子に、悲しそうにする白鷺。

ただ、白鷺も彼らがそれだけ過去に縛られる理由が分かっている。

だからこそ、乗り越えてほしいと考えていたし、簡単に乗り越えることが出来ないことはよく分かっていた。



「でもさ」



少し嬉しそうなレキのその声に、白鷺はレキの顔を見つめる。

そして、ハッとしたように目を見開いた。



「あいつ、言ったんだ」



その表情は、白鷺が今まで見てきた中でも……いや、今まででも見たことのない程柔らかく、綺麗な笑顔だった。

プラチナブロンドの髪が靡き、まるで光っているかのように月明かりが照らす。



「前に進みたいって」

「それって……」

「俺はあの日のことは許すことは出来ない。
でもこのままじゃダメなことくらいちゃんと分かってる」