静かな時が流れる。
琳埜は未だにすやすやと寝息を立てて眠っていた。

鳳舞は起こすこともせず、自然に起きるまで待つつもりのようだ。

タンッと軽い音がなり鳳舞は横目でその音の正体を見る。
そこには座ろうとしている琉飛の姿があった。

琉飛も琳埜が自然に起きるまで待つつもりなのだと、鳳舞は理解した。



「なぁ、鳳舞」

「ん?」

「お前、辛くねぇの?」

「何が」



琉飛の問いかけに答えを返すことをしなかった鳳舞。
表面的には問いかけているが、疑問符すらつけないその言葉はどこか刺々しく、話すことを拒んでいるようであった。



「分かってんだろ」



琉飛はそれに臆することなく言葉を返した。
ピリッと張り詰めた空気が流れる。



「琉飛」



その空気を断ち切ることもなく、むしろ尚張り詰めた空気を凄ませ鳳舞は口を開いた。

琉飛は何も言わず、鳳舞を真っ直ぐに見つめている。



「お前が俺のことを大切に思ってくれてることは知ってるよ。

下手すりゃ赤ん坊の時から一緒で、それこそ過去すら共有しているレベル。

俺だってお前のこと、すごく大事に思ってる」