舞台から降りると、音楽の先生と担任が、既に待ち構えてらっしゃいました。
「ごめんなさいね」
突然に謝られたのは、音楽の先生でした。
「再生ボタンを押すだけだって、聞いていたものだから…
音量が前のグループのままだったみたい。本当にごめんなさい」
「先生、あまり気に病まれないでください。私は、十分に楽しみましたから」
罪悪感に苛まれていた先生を諭すように、私は微笑み言いました。
すると、少し肩の荷が下りたのか、先生は表情を楽にしてくださいました。
「伴奏に誘ってくれて、ありがとう。良かったら、一緒にアンサンブルコンテスト、出場しましょう」
先生の言葉に、私は本当に嬉しく思いました。
しかし、2人だけの世界に入り込もうとしていたのを、担任が遮るようにに割り込んできたのです。
「おい、萩原。お前、凄いじゃないか!あんな凄い特技を持っているのなら、何故言わない?!」
「毎日、練習していたじゃないのよねぇ。ねぇ、萩原さん」
「そうだったのか。知らなかったな…何故堂々と練習しなかったんだ?」
「それは…わたし、一人では音楽室の使用許可はおりませんので…」
私がそう言うと、担任は不思議な顔をしたのです。
そもそも担任はいつも、私に厳しい態度で接します。
いつもそのような担任が、今日に限って親しいことに、私も不思議そうな顔をいたしました。
すると、担任は腕組みをすると、こう言ったのです。
「よし。では俺が是非、音楽室を練習場所に使わせてもらえるよう、掛け合ってみよう」



