曲の最後の音を飛ばすと、またその場に静寂が訪れました。
私の前にしていた5人組の時のような、拍手や歓声はありませんでした。
しかし、私は大変満足しております。
これ程全力で吹いたのは、何時振りでありましょうか。
これ程の楽しい想いをしたのは一体、何時振りでしょう。
自らで勝手に目の前に持ってきてしまった、スタンドマイクのマイクを取りました。
『ご清聴っ、ありがとうございました。この後もっ、皆さんの2日間、良きものでありますように。お邪魔いたしました…っ』
興奮冷め遣らぬゆえの行為です。
息も絶え絶えのままで、マイクに向かって叫んでおりました。
私自身でもこのような行動を起こすだなんて、驚いていました。
今日の私は、私自身も知らない人物であります。
非常に楽しいのです。
そして、頭を下げ、マイクを戻し、立ち去ろうしました。
パチ、パチパチパチ…
一人分の、どなたかが拍手してくださいました。
私はお礼を兼ね、振り返り、お辞儀をしようとしました。
拍手の主、それはやはり江波くんだったのです。
普段、そのようなことをされる、しようと思われる方ではなさそうですのに、本当に有り難い事です。
既に、泣いてしまいそうでした。
しかし、つい次に野球部のお仲間もつられて、拍手してくださいました。
そして、そのまま拍手が広がってゆきました。
「よかったぞー!」
「かっけぇ!!」
「萩原ちゃーん!」
「かっこいー!」
まるで、変わり者である、私を受け入れていただけている様に思えたのです。
思わず、抑えきれずに、大号泣してしまいました。



