「あのですね…先生や学校から言われてしまい、音楽室を使うことが出来なくなってしまいました」
私の発した一言目に江波くんは、呆気にとられていました。
「人が集まらないのですから、仕方がないですよね。…悲しいですけれど」
「そんなことがあったんですね…無神経に聞いてしまい、すみませんでした」
「いえ、大丈夫です」
そのまま私は、下を向きました。
しかし、江波くんは腕組みをして、上を向いていたのです。
「それは、人数が絶対の条件なんですか?」
「え、ええ。きっと」
「人数が足りなくても、練習場所が必要だ、と学校に知らしめればいいのでは…
その場合、部活ではなく、同好会という形になりそうですが…」
「ごめんなさい。少し理解が追いつきません」
「えっと…
俺は音楽の世界のことは、全く知りませんが、何か大会などはあるんですか?」
「夏には吹奏楽のコンクールといって、まず地方で競うものがあります。
あとは…ソロコンテストや少人数で行う、アンサンブルコンテストがございます」
「お、おお…何やらたくさん、あるんですね。
では、そういった大会を目指すために、練習場所が欲しい、と伝えるのは、どうでしょうか…」
「そういった手もあるのかもしれませんね」
それについて私は、あまり納得することが出来ませんでした。



