お早いもので、コスモスの花は秋風に揺れ、燕たちは家の軒下で帰り支度を始める頃となりました。

私はたった今、職員室という心身ともに窮屈な場所におりました。



「萩原、この点数は何だ」

「申し訳も思い当たりません」

「まったく…
まあ、わからないなりに適当に解答を埋めて、空欄だけは作らない様にとする心意気は、認めてやる」

「まあ、それはありがとうございます」



先程から私は、担任から授業の最中に行った、小さな試験の結果について責められていたところでございます。

私の飄々とした様子に、担任は頭を抱えておられました。



「こんな簡単な小テストもわからないなんぞ…この先も思いやられるな」

「ええ、そうですね」



担任の額には、筋が浮き上がっておりました。

これは、非常に危険です。

ああ、私は早くここを立ち去らなければなりません。

そう悟りました。



「それでは先生、私はこれで。失礼いたします」

「あ!こら、待て!!萩原!!」



私ったら、いつの間にやら、担任から試験用紙を奪い取り、夢中になって駆け出していました。

未だに担当の叫び声が響いてはいましたが、そのようなことも気にせず、出入口へ向かったのです。

私は扉の前まで来て、一度丁寧にお辞儀をしました。

その後、勢い良く扉を開き、飛び出そうとしたのですが。