「あの……何と言うか……」



結局、最後まで、おっしゃってはくださいませんでした。

さらには、目を逸らされたままでありました。





回想はここまでです。

江波くんはあの時、誤魔化してはっきり最後まで、おっしゃってはくださいませんでした。

しかし、わかるのです。

彼の必死な気持ちが、よく伝わってまいりました。

きっと励ましてくださったのではないでしょうか。

私は、その様に思います。

江波くんの様な方もいらっしゃるのです。

人間は、十人十色であります。

100人居れば、100のドラマがあるのです。

ですから「吹奏楽部」にきっとどなたかは関心を示して、やってきてくださるはずでしょう。

私は決して、卑屈などにはなりたくありません。

しかし、時には落ち込むことくらいはございます。

それでも、すぐに気を引き締め、向き直るのです。

なぜならば、あがり症の彼からあの様に声をかけてくださったのですから。

強かに、まいらねばなりません。

そして、私の心の支えである彼は今、学校には居ないのですから、尚更です。

江波くんは今、燃えるような日差しの下で戦っています。







Scene 8 突っ走るお節介