【番外編】 And , then of scene



私が泣きそうになるとき、私が思い悩むとき、愛しの彼は決まって言葉を探します。

そして、言葉を選ぼうとしてくださいます。

しかし、彼は結局、それすらも言いあぐねてしまうのです。

私は彼のそのようなところも含めて、相変わらず、愛しく想っておりました。






さて、皆様。ご無沙汰しております。

暑中お見舞い申し上げます。

暦の上では秋ですが、厳しい暑さが続いております。

如何お過ごしでしょうか。

ご覧の通りに、愛しの彼こと江波くんに対する私の気持ちは、出会ってから1年以上が過ぎた、たった今でも、熱く燃え上がっております。

それはもう、無防備な姿のままでは、何とも耐え難いこの季節の様にです。

そんな厳しい日差しの中、私は愛しの江波くんを隣に置き、非常に贅沢な想いをしておりました。



「江波くんの方が、蜜がたっぷりですね……」

「えっ、あ……あの、えっと……」

「どうしましょう。どうしても江波くんの方が、美味しそうに見えてしまいますね……」

「あ、あの……そんなに寄られると、何というか、その……」



私たちが居る場所は、近所の駄菓子屋さんの前でした。

店先の長椅子に、腰掛けていたのです。

ジリジリと照り付ける太陽の下で、江波くんの方へと、にじり寄ってまで、私はある物を見つめておりました。

そのある物とは、江波くんの手の中に有りました。

いつまでもしつこい私に、押し負かされたであろう江波くんは苦笑いをしつつも、それを差し出してくださいました。



「……萩原さん。俺のと交換しましょう」

「よろしいのですか!」

「よ、よろしいですよ……もちろん」