「改めて、ご卒業おめでとうございます」
「あ、ありがとうございます」
言葉にしてしまえば、卒業と言う事実がより一層、実感として沸き上がってまいります。
しかし、これが最後の機会ですから、涙を流す暇などありません。
「卒業されてしまうのですね…」
「はい」
「どうしても。私は、江波くんが…好きです。傍に置いてはいただけませんか?」
私は頭をそっと、下げました。
江波くんの顔など、恐ろしくて、今はとても見ることが出来ません。
またはぐらされてしまうのではないか、と不安な思いで、反応を待ちました。
かなりの間を置いた後に、それは聞こえたのです。
「…喜んで」



