日差しはこれ程にまで暖かいといいますのに、未だ冷たい風が吹いています。

私は、いつもの通学路を行きます。

とうとう、やって来てしまいました。

本日は、卒業式です。

江波くんの最後の勇姿を、この目で確と、見届けなくてはなりません。

そして、私にはもう一つの目的がありました。

あの日、有耶無耶になってしまった告白に、白黒はっきりつけることです。

もう一度、言っておきたいと思っております。






体育館は、騒めいていました。

たった今は、卒業生の退場を見送っているところです。

拍手で送ります。

周りの方々を見れば、拍手の中で在校生もすすり泣いている子が居ました。

慕っていた、または好きな先輩がいらっしゃったのでしょう。

私もそれに、ひどく同感できます。

まだ私は、泣いてはいませんでしたが。

その時、江波くんが通り過ぎてゆきました。

私は人一倍、大きく手を叩きました。

私は真ん中の席に座っていましたから、きっとあちらは気付いてらっしゃらないでしょう。

ただ彼は確かに、真っすぐに前を見据えていたのです。

彼には、もう次の段階が、見えているのでしょう。

私はそこで、彼との意識の差を知り、僅かに寂しくなったのです。