「あー、湿っぽいの、ヤダヤダ。てかさ、涙ぐんでないで、江波は?続けんの?」



さりげなく舌に毒を持つあいつが、俺に話をふる。

この雰囲気では、なかなか切り出しにくいところだ。

俺は、気まずそうに口を開いた。



「…俺も、余裕が出来てから、しようと思ってる。そのために、思い立ったら、直ぐに始められるようにあの企業を選んだんだ。
とりあえず、俺はしない間も、野球を、傍に置いておきたい…」

「傍に置いておきたいって、お前まで湿っぽいのを引き摺ってんじゃねぇよ!」

「ところでさ…」



相変わらず、あいつがさりげなく忍び寄り、またも俺に話をふってくる。



「傍に置いておきたい、って言えば…あの子とは?どうするの?」



俺は一瞬だけ、本当に一瞬だが、とぼけるフリをしてみた。