めはくちほどに


いつも地下鉄を使っているので、地上を走る風景は初めて見る。

人の車は居心地が悪く、それに車種とかよく分からないけれど、この車絶対に高級なやつだ。

髪の毛一本落としてはいけない……!

「座りにくい? 後ろに下げても良いよ」

副社長が助手席の足元に手を伸ばしてくる。それを慌てて止めて、前を見てくれと頼んだ。

「それで、どこに寄るの?」

「隣駅のスーパーに……」

ああ、副社長を足代わりにスーパーへ向かうなんて……。

うちの女子社員に知られたら殺される、否、明日から私の引き出しには牛乳がぶちまけられているはず。