めはくちほどに


「海都が高校出て働くって言ったときは、家庭内戦争になりましたけどね」

「失礼だけど、親御さんは……」

「私が21のときに父親が心筋梗塞で、その二年前に母親が亡くなりました」

笑っていた副社長が口を噤んだ。それは、そういう反応をするしかない。

「じゃあそれからずっと、君は紺野家の家長なわけだ」

「家長ではないですよ。あの家で年齢が一番上なだけで、海都の方が頭が良いし、葉苗の方が器用だし、星子の方がしっかりしているし」

「紺野さんがいるから、成立していると、僕は思うけどね」

そんなことを、人を見る目のある副社長に言われるなんて思わなかったので、私はとても嬉しく思った。