めはくちほどに


星子が自分の部屋から椅子を出して、お誕生日席に座る。葉苗がお米を炊いていてくれたので、私はおかずを作るだけ。

エプロンをつけて台所に立つ。と同時に玄関の鍵が開く音がした。

「ただいま、あれ?」

海都が声を出しているのを聞きながら、フライパンを出す。

「お邪魔してます」

「こんばんは、先日はどうも」

大人の挨拶のやりとりの合間に妹二人が「おかえりー」と口々に言った。
勿論、私も言った。

「お詫びにケーキをと思って。あと……」

「海都の好きなモンブランあるみたいよ」

結婚云々言い出しそうだったので、私は遮った。