めはくちほどに


家まで送ると言われて、結局また副社長の車に乗った。

後部座席にちょんと乗った近くのケーキの箱を見て、家に行って良いかどうか聞く前から来る気でいたのだろうと予想する。

結婚はしないけど。

「ケーキ嫌いな人いる?」

「みんな大好きなので喜ぶと思います。ありがとうございます」

家に帰ると、妹二人が既に帰って来ていて、副社長の姿を見て小さく悲鳴を上げた。
芸能人か。

「海都は?」

「バイトだって。もうすぐ帰ってくると思う」

星子が返事をする。台所を見ると、朝使った食器が洗われていた。あたしと海都は先に出るので、片付けは葉苗がしてくれる。