めはくちほどに


さっさと買い物をして、このまま逃亡というのはどうだろう。
我ながら良い考えだと思う。

今日の夕飯は八宝菜。

白菜や豚肉をカゴに入れて行く。すっと、そのカゴの重さがなくなったのでそちらを見ると、副社長がカゴを持っていた。

「何作るの?」

「八宝菜です」

「作れるの? すごいね」

すごいって言っても、野菜とお肉切って八宝菜の素みたいのと一緒にフライパンに入れるだけですけどね。

副社長の用事は済んだのか、来るまでに店を出るという挑戦は絶たれた。

カゴは返してくれそうにないので、持たせたままにしておく。