「沙耶」

「なに?」


こいつは誰を思って練習なんてしているんだろうか。


「何も無い」

「なぁに、どうしたの?」

「…気にすんな」

「そう?…好きだよ」


好きだという瞬間、こいつは大切なものを見つめるかのような顔になる。


誰がこいつにこんな顔をさせているんだろう。


もし俺が、あの時、あの告白に答えていたら、どうなっていたんだろう。